君のいた時を愛して~ I Love You ~
会計を済ませ、佐伯先生への紹介状を貰った俺とサチは、ずいぶん前にたこ焼きを食べに行ったことを思い出しながら、病院前のタクシー待ちの列に並んだ。
雨が降りそうな空を俺が見上げていると、サチが『コータ、ごめんね』と呟いた。
「サチ?」
俺はサチの事を見つめた。
「本当だったら、いっぱい色々なところに遊びに行って、楽しいこと沢山する予定だったのに。ごめんね、コータ」
サチは諦めているのではなく、既に、自分の命のあり方を決めているのだと、俺は感じた。
もしかしたら、サチは、ドナーが見つかっても、もう移植を受けないと言うかもしれないと、俺は感じた。
「あたし、これからの一分、一秒を大切に、コータと一緒に過ごしていきたい」
俺はサチをぎゅっと抱きしめた。
「俺が、そばにいるから・・・・・・」
本当は、俺を置いていかないでくれと言いたかったけれど、サチのすべてを受け入れた落ち着いた表情を見たら、もう、そうは言えなかった。
「たこ焼き、食べたい・・・・・・」
腕の中のサチが、ささやかに笑って言った。
「じゃあ、食べに行こう」
俺は言うと、ちょうど順番が来て扉を開いたタクシーにサチを乗せ、目的地を告げた。
昼には遅く、飲みには早い時間の店は、前回同様に空いていた。
持ち帰りを考えていた俺に、サチが店で食べたいというので、俺はサチを支えて店に入った。
鉄板の熱気の籠った店は、テーブルまで温かくなっているように感じた。
「今日は、絶対に、火傷しないように食べる自信があるんだ」
サチは言うと、笑って見せた。
「じゃあ、前回と同じで良い?」
俺の問いに、サチが頷き、『いらっしゃーいませ』という外国人の店員さんに、たこ焼きと焼きそば、それにウーロン茶を頼んだ。
「ありがとぅございまあす」
微妙な発音をする店員さんを見送り、俺とサチは背もたれのない丸椅子に座ってたこ焼きと焼きそばが来るのを待った。
ウーロン茶が来ると、思わず店内の暑さから、俺もサチもごくりとのどを鳴らしながら、冷たいウーロン茶を飲んだ。
サチの火傷をしない秘訣は、先にたこ焼きを半分に切りって冷やすというアイデアだった。それが、正しいたこ焼きの食べ方かどうかはわからなかったが、俺もそれに倣って冷やしながらたこ焼きと焼きそばを交互に食べた。
「コータ、お祭り、行きたかったね」
突然のサチの言葉に、俺は飲み込んだたこ焼きがのどに詰まったような感覚を覚え、その熱さに涙がじわじわと溢れてきた。
「まだ、移植ができないって決まったわけじゃないんだから、お祭りだって行かれるかもしれない・・・・・・」
声が涙でくぐもってしまい、俺はそれ以上一言も言葉を継げなかった。
「コータは優しいね。あたし、コータに出会えて、本当に幸せだった」
サチは言うと、優しい笑みを浮かべた。
俺だって、サチに出会えてよかったと思ってるし、サチを失うなんて、考えられないと言いたかったけれど、喉の奥を焼くように熱いたこ焼きがこれの言葉を封じ、俺はウーロン茶を一気に飲み干した。
「コータ?」
俺の様子にサチが心配そうに声を掛けた。
「やっぱり、たこ焼きは熱かった・・・・・・」
俺は泣き笑いの表情でサチに答えた。
「あたしも、気をつけなくちゃ」
サチは言うと、半分に切ったたこ焼きを用心しながら口に入れた。
☆☆☆
雨が降りそうな空を俺が見上げていると、サチが『コータ、ごめんね』と呟いた。
「サチ?」
俺はサチの事を見つめた。
「本当だったら、いっぱい色々なところに遊びに行って、楽しいこと沢山する予定だったのに。ごめんね、コータ」
サチは諦めているのではなく、既に、自分の命のあり方を決めているのだと、俺は感じた。
もしかしたら、サチは、ドナーが見つかっても、もう移植を受けないと言うかもしれないと、俺は感じた。
「あたし、これからの一分、一秒を大切に、コータと一緒に過ごしていきたい」
俺はサチをぎゅっと抱きしめた。
「俺が、そばにいるから・・・・・・」
本当は、俺を置いていかないでくれと言いたかったけれど、サチのすべてを受け入れた落ち着いた表情を見たら、もう、そうは言えなかった。
「たこ焼き、食べたい・・・・・・」
腕の中のサチが、ささやかに笑って言った。
「じゃあ、食べに行こう」
俺は言うと、ちょうど順番が来て扉を開いたタクシーにサチを乗せ、目的地を告げた。
昼には遅く、飲みには早い時間の店は、前回同様に空いていた。
持ち帰りを考えていた俺に、サチが店で食べたいというので、俺はサチを支えて店に入った。
鉄板の熱気の籠った店は、テーブルまで温かくなっているように感じた。
「今日は、絶対に、火傷しないように食べる自信があるんだ」
サチは言うと、笑って見せた。
「じゃあ、前回と同じで良い?」
俺の問いに、サチが頷き、『いらっしゃーいませ』という外国人の店員さんに、たこ焼きと焼きそば、それにウーロン茶を頼んだ。
「ありがとぅございまあす」
微妙な発音をする店員さんを見送り、俺とサチは背もたれのない丸椅子に座ってたこ焼きと焼きそばが来るのを待った。
ウーロン茶が来ると、思わず店内の暑さから、俺もサチもごくりとのどを鳴らしながら、冷たいウーロン茶を飲んだ。
サチの火傷をしない秘訣は、先にたこ焼きを半分に切りって冷やすというアイデアだった。それが、正しいたこ焼きの食べ方かどうかはわからなかったが、俺もそれに倣って冷やしながらたこ焼きと焼きそばを交互に食べた。
「コータ、お祭り、行きたかったね」
突然のサチの言葉に、俺は飲み込んだたこ焼きがのどに詰まったような感覚を覚え、その熱さに涙がじわじわと溢れてきた。
「まだ、移植ができないって決まったわけじゃないんだから、お祭りだって行かれるかもしれない・・・・・・」
声が涙でくぐもってしまい、俺はそれ以上一言も言葉を継げなかった。
「コータは優しいね。あたし、コータに出会えて、本当に幸せだった」
サチは言うと、優しい笑みを浮かべた。
俺だって、サチに出会えてよかったと思ってるし、サチを失うなんて、考えられないと言いたかったけれど、喉の奥を焼くように熱いたこ焼きがこれの言葉を封じ、俺はウーロン茶を一気に飲み干した。
「コータ?」
俺の様子にサチが心配そうに声を掛けた。
「やっぱり、たこ焼きは熱かった・・・・・・」
俺は泣き笑いの表情でサチに答えた。
「あたしも、気をつけなくちゃ」
サチは言うと、半分に切ったたこ焼きを用心しながら口に入れた。
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