君のいた時を愛して~ I Love You ~
エピローグ
あれからずいぶん経った今でも、俺はあの日のことをよく思い出すことができないし、それから一月以上の記憶がどこかに消えてしまっている。
やっと戻ってくるとアパートは修理か建て替えで揉めていた。
修理するにしても、家賃が大幅に跳ね上がることから、今の居住者には住み続けられないだろうという話になり、結局アパートは取り壊され、建て直されることになった。
当然、建て替えを待つわけにもいかないし、そんな高い家賃を払える目度もないから、俺は部屋を探すことになった。それでも、サチと暮らしたこの場所を離れられず、俺はあちこちの不動産屋をあたり、近くにあるこれまた次に地震が来たらアウトだなという感じの古いアパートの部屋を借りた。
間取りはワンルーム。家賃が高くなった分、お風呂とトイレがついた。しかし、兼用の洗濯機がないので、コインランドリーに通うか、自力で洗濯機を買うか、未だに決断しかねている。
サチが命懸けで守ってくれたフォトフレームはサチの骨壺が収められた箱の前でサチの美しい姿を今も映している。そして、その脇にはサチに手渡すことができなかった赤いバラの花は、いつも欠かさず飾るようにしている。
いまでも、あのMP3プレーヤーに入っているのはサチが愛したあの曲だけだ。そして、俺が部屋で聞くのも、あの曲だけだ。
地震の後、職場放棄していなくなった俺は無断欠勤のせいで契約が解除されており、挨拶に行ったマネージャーは『せめて連絡してくれれば』と言ってくれたが、自分でも何があったのかわからないくらいで、そんな無責任な行動をとれば、社会人失格で契約解除は当たり前だ。
昼だけでも働かせてもらえないかと頼みに行った大将は、そのまま俺をフルタイムで雇ってくれた。当然、昼の激戦の後、休憩して夜の店に戻るというハードな仕事ではあるが、サチが一緒に働いていた、大将の店にいる間は孤独を感じないで済んだ。
あのアパートの住人は、建て替えが決まった後散り散りばらばらになってしまい、今はどこに住んでいるのかも知らない。というか、いまのアパートの上下両隣に住んでいる人も俺は知らない。
きっと、サチがいたら、ここでもみんなと仲良くなって、色々な人と知り合うことができたに違いない。でも、やっぱり、俺には知らない誰かと友達になることは難しい。
そう、しばらくたってから、お金を貸してくれたお礼を言うんで薫子さんとお茶をしたけれど、薫子さんは寂しそうで、決して幸せそうではなかった。
今でも俺は後悔している。あの日仕事に出かけたことを、サチの願いを聞き入れなかったことを。でも、サチが痛みもなく、苦しみもなく、眠ったまま病に蝕まれた肉体から解き放たれたことはよかったと思っている。
でも、もっともっと、一緒に居たかった。
サチが過ごした辛く長い子供時代の分も、もっともっと、沢山幸せにしてあげたかった。
俺は、これからもサチだけを愛し続ける。そう、あのサチの愛した曲を聴きながら、あの曲を聞いていたサチの姿を思い出しながら暮らしていく。
あの曲が証明してくれる。サチがここにいたことを、俺と一緒に暮らしてくれたことを。サチが俺を愛してくれたことを。俺がサチだけを愛していたことを。
俺はサチを愛し続ける。この命がある限り。サチ、君の居た時を愛しみながら・・・・・・。
サチ、君のいた時を愛して~ I Love You ~
やっと戻ってくるとアパートは修理か建て替えで揉めていた。
修理するにしても、家賃が大幅に跳ね上がることから、今の居住者には住み続けられないだろうという話になり、結局アパートは取り壊され、建て直されることになった。
当然、建て替えを待つわけにもいかないし、そんな高い家賃を払える目度もないから、俺は部屋を探すことになった。それでも、サチと暮らしたこの場所を離れられず、俺はあちこちの不動産屋をあたり、近くにあるこれまた次に地震が来たらアウトだなという感じの古いアパートの部屋を借りた。
間取りはワンルーム。家賃が高くなった分、お風呂とトイレがついた。しかし、兼用の洗濯機がないので、コインランドリーに通うか、自力で洗濯機を買うか、未だに決断しかねている。
サチが命懸けで守ってくれたフォトフレームはサチの骨壺が収められた箱の前でサチの美しい姿を今も映している。そして、その脇にはサチに手渡すことができなかった赤いバラの花は、いつも欠かさず飾るようにしている。
いまでも、あのMP3プレーヤーに入っているのはサチが愛したあの曲だけだ。そして、俺が部屋で聞くのも、あの曲だけだ。
地震の後、職場放棄していなくなった俺は無断欠勤のせいで契約が解除されており、挨拶に行ったマネージャーは『せめて連絡してくれれば』と言ってくれたが、自分でも何があったのかわからないくらいで、そんな無責任な行動をとれば、社会人失格で契約解除は当たり前だ。
昼だけでも働かせてもらえないかと頼みに行った大将は、そのまま俺をフルタイムで雇ってくれた。当然、昼の激戦の後、休憩して夜の店に戻るというハードな仕事ではあるが、サチが一緒に働いていた、大将の店にいる間は孤独を感じないで済んだ。
あのアパートの住人は、建て替えが決まった後散り散りばらばらになってしまい、今はどこに住んでいるのかも知らない。というか、いまのアパートの上下両隣に住んでいる人も俺は知らない。
きっと、サチがいたら、ここでもみんなと仲良くなって、色々な人と知り合うことができたに違いない。でも、やっぱり、俺には知らない誰かと友達になることは難しい。
そう、しばらくたってから、お金を貸してくれたお礼を言うんで薫子さんとお茶をしたけれど、薫子さんは寂しそうで、決して幸せそうではなかった。
今でも俺は後悔している。あの日仕事に出かけたことを、サチの願いを聞き入れなかったことを。でも、サチが痛みもなく、苦しみもなく、眠ったまま病に蝕まれた肉体から解き放たれたことはよかったと思っている。
でも、もっともっと、一緒に居たかった。
サチが過ごした辛く長い子供時代の分も、もっともっと、沢山幸せにしてあげたかった。
俺は、これからもサチだけを愛し続ける。そう、あのサチの愛した曲を聴きながら、あの曲を聞いていたサチの姿を思い出しながら暮らしていく。
あの曲が証明してくれる。サチがここにいたことを、俺と一緒に暮らしてくれたことを。サチが俺を愛してくれたことを。俺がサチだけを愛していたことを。
俺はサチを愛し続ける。この命がある限り。サチ、君の居た時を愛しみながら・・・・・・。
サチ、君のいた時を愛して~ I Love You ~