君のいた時を愛して~ I Love You ~
 コータが買い物に出た後、サチは少し汗をかいたことに気付き、布団から這い出すと着替えを取り出した。
 体が冷えないようにと、勢いよくパジャマ代わりの長袖Tシャツを脱ぎ捨てると、新しい物にさっと袖を通した。それから、同じように勢いよくズボンを脱いだサチは、太ももの側面にある青痣に目を止めた。
「えっ、なにこれ?」
 昨日はなかった痣にサチは驚きを隠せず、何度も痣の上を手で撫でたり押したりしてみた。しかし、痛みはなく、どこかにぶつけたようにも思えなかった。
 そうしているうちに体か冷え、ブルりと体を震わすと、サチは着替えのズボンをはき、再び布団に潜り込んだ。
「なんで痣なんかできたんだろう・・・・・・」
 何度考えても思い当たる節がない。
 夜中にトイレに行くとき、ドアノブによろけてぶつかることはあるが、それにしては場所が低すぎる。
 大体、熱はあるものの、喉も痛くないし、咳も出ないし、思えば風邪らしい症状はない。一応、風邪薬を飲んでいるからかなとは思っていたが、ここまで何の症状もないとなると、恐ろしく風邪薬が良く効いているか、風邪ではなくて熱が出ているかのどちらかということになる。
「最近、ちょっと頑張りすぎてたから、風邪じゃなくて、疲れて熱が出たのかな?」
 サチは呟きながら、慣れないキャバクラでの仕事に心も体も疲れ果て、熱を出したことを思い出した。
「でも、そんな、無理はしてないつもりだったんだけどなぁ」
 呟きながら部屋を見回すと、お気に入りのミシンとありとあらゆる小物が目に入った。
 確かに、あんなものがあると便利、こんなものがあれば便利と、あちこちでアイデアを盗んできては創作を続け、先日はリサイクルショップで入手した厚地のボア毛布を加工して断熱カーテンを造って架け替えたりしていた。
「確かに、疲れてたかも・・・・・・」
 サチは思うと、嬉しすぎて頑張りすぎた自分を褒めながらも、コータを心配させてしまったことを反省した。
「やっぱり、頑張りすぎはだめだよね」
 サチは自分に言い聞かせるように言うと『とにかく、早く良くならなくちゃ』と自分に言い聞かせながら再び眠りに落ちていった。

☆☆☆

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