君のいた時を愛して~ I Love You ~
 ランチを働いているスーパーの総菜で済ましている俺は、休憩室で焼き鮭弁当を食べながら、大将の店で働いているだろうサチの事を想った。
 大将の店で、昼にいつも魚を使った賄いを食べていたせいか、スーパーで働き始めても、つい魚の弁当を選んでしまう自分に俺は苦笑した。
「休み明けは、体にきついんだよな」
 俺は自分の時の事を思い出しながら、サチが疲れ切っているだろうなと、心配になった。
 仕事中はもちろん携帯の使用は禁止だが、休憩中はロッカーから取り出し、サチからの連絡があるかもしれないのでPHSは肌身離さず持っている。
 しかし、大将の店で走り回っているだろうサチからは連絡はなかった。
 サチが夕飯を作らなくてもいいようにするには、何かいい方法はないかと考えていると、休憩室のテーブルの上に無造作に置かれている近くにできたピザチェーン店のチラシが目に入った。
 正直、俺とサチの生活からいえば、ピザは多分、クリスマス・ディナーの次の次くらいの贅沢だけど、最近の疲れ切っているサチを見ると、今日の夕飯は何とかしてあげたいと俺は思った。
 チラシを手に取ってみると『全種類のピザ持ち帰りなら半額』と書かれていた。
 半額なら、そこまでの贅沢じゃないと、ピザの写真を眺めていると、隅の方にホッチキスで止められた小さな紙が目に入った。『社員証呈示でさらに十%オフ』ということは、一応契約社員ではあるが、俺は社員証を持っているから、半額からさらに一割引きになるのだとわかると、俺の心はすぐに決まった。
 PHSを取り出すと、サチに『こんばんは、ピザを買って帰るから、夕飯の支度はいいよ』とメールを送った。

☆☆☆

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