お嬢様、今夜も溺愛いたします。
「………」
ひとつ、しかない……
私の頭の中に浮かぶのは、あんなことやそんなこと……って、ちが───うっ!!
えっ、えっ、えっ!?
うそ。
嘘でしょ!?
息が荒くなって、動悸がとまらない。
「では、そういうことなので。
覚悟、しといて下さいね?
めいっぱい、とかしてさしあげますから」
クスッと笑った声が聞こえた直後。
「着きましたよ、お嬢様」
フロントドアが開き、手が差し出される。
そして黙り込む私を見てまた、ふっと笑みを浮かべる。
「今夜のことはさておき、後ほどまた、ご夕食のお呼びに伺います。それまで私は少々やらなければいけないことがごさいますので、何かありましたら、メイドに」
「………」
そして恭しく礼をした黒木さんは、スっと私の耳元へ近づくと、腰が砕けるほどあまく囁いた。
「そんなに顔を赤くさせて。
今夜は、長い夜になりそうですね──……」