お嬢様、今夜も溺愛いたします。

浴室のドアの向こうに見える黒い影。

いつの間に黒木さん、部屋に入ってきてたの!?


思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。



「く、黒木さん!!
絶対入ってこないで下さいよっ!?」


今はすりガラスのドアの向こうにいるから見えないけど、入ってこられたらおしまい。


だってこの湯船、ラベンダーの香りがついているだけで、普通に透明だから!!



「お部屋の外でお待ちしていようかと思ったのですが、あまりに遅いので心配になりまして」


「す、すいません……」


どこもかしこも気合い入れて、綺麗にしてたなんて言えない……


「お顔だけでも拝見できませんでしょうか?
私黒木、お嬢様が出るまで心配でなりません」


「ぜったいいやです!!」


「それは残念」


ザバッと立ち上がったところを慌てて座り直す。

顔なんか見せにいこうもんなら、絶対ドア開けられて、身体見られる。


そんなのできっこない!!


行く前に気づいて良かったよ、ほんと……



「では、お上がりするのをお待ちしております」



クスッと笑って黒木さんは浴室前から姿を消す。


また、からかわれた……


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