お嬢様、今夜も溺愛いたします。

「ほらはやく」


「うわっ、ちょっ……!!」


近寄ってきた黒木さんに腕をクンっと引っ張られて、否応なく座らせられる。


ち、近いっ……


執事服から漂う柑橘系の香りが鼻をくすぐって、頭がクラクラしてくる。


「私ははやくお嬢様との時間を楽しみたいのです。それに尚のこと、私を意識していただけるかと思いまして」


今以上に、と。


「なっ……!!」


横の髪を耳にかけられて掠めた唇が紡いだ言葉は、とっても甘い。

途端にこの後のことが想像できて、鼓動が一気に加速し始める。


「………」


俯いて黙る私に、黒木さんはクスクス笑うだけ。


どれだけ人をドキドキさせたら気が済むの。

意識なんてとっくにしてる。


だからこうして、黒木さんの言動一つ一つに一喜一憂してるんだよ。
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