お嬢様、今夜も溺愛いたします。
「お嬢様の髪は、とても綺麗なブラウンですね」
黒木さんの指が優しく髪をすり抜けていく。
その度にうなじや耳に指が当たって、心臓がバクバクうるさい。
「あっ、は、はい。
母の遺伝だと思います。母も元々黒髪じゃなくて、明るい色をしてましたから」
「そうでしたね」
え……?
瞬間、ドキドキと高鳴っていた鼓動がピタッとやむ。
黒木さん、生前お母さんと会ったことがあるのかな?
おじいちゃんとお母さんのこの家でのことも知ってたし、お父さんの名前も。
まあ、会っててもおかしくないか。
いや?
でも確か黒木さんは、私がこの家に来る1週間前ほどに執事になったって……
「私は好きですよ」
「へっ?」
カチッとドライヤーが止まってハッとする。
「く、黒木さん?」
思考が戻ってきた時には既に、黒木さんは私の正面にひざまずいていて。
「さらさらで、指通りも滑らかで。
ずっとさわっていたいほど、愛おしいです」
髪を一束持ち上げられて、そっと口づけが落とされる。
「何よりも大事なお嬢様の一部ですから」
「っ!!」
なんて甘すぎるセリフ……
目を細めてにっこり笑ったその表情は優しさが零れんばかりに感じられて。
またドキッと心臓が跳ねた。