お嬢様、今夜も溺愛いたします。
────────


「ではお嬢様、少々お待ち下さいませ」


一礼して、黒木さんが部屋を出ていく。


い、いよいよね……


ドライヤーが終わって髪をとかされている時からずっと、心臓の音がバレていた気がする。


黒木さんから漂う雰囲気も、視線も、髪にふれていたその手も、とびきり甘くて優しくて。


はぁ……やばい。

本当に緊張してきた。


カチコチとして、うまく身体が動かない。


ほんとどうしたらいいの!?


頭がグルグルと回って落ちつかない中。


「失礼致しましたお嬢様」

「い、いえ……って!?」


戻ってきた黒木さんの恰好に目を見開いてギョッとする。


な、なな、なななんで!!?


「どうして上着脱いでるんですかっ!?」

「え?どうしてって……汚れちゃ、困りますし」


私を横目で見てクスッと笑う。


「っ!!」


なにその流し目と甘すぎる微笑みは……

あまりに色っぽすぎて、思わず顔を逸らす。

でもやっぱり気になって目線だけ送った途端。


!!!?


声にならない悲鳴が心の中で響き渡った。


なんでなんでなんでぇぇぇーーーっ!!?


ネクタイをシュルっと落とし、シャツのボタンを上から2つほど外す。

手袋はそのままに、腕まくりまで始める黒木さん。


綺麗な鎖骨と伏せられた長いまつ毛が、妖艶でとてつもない色気を放っている。


ひぇぇぇーーーっ!!!


今度こそ真っ赤になっているだろう顔を両手で覆って、ドッドッドと爆発しそうなほどうるさい心臓に体がぶるっと震える。


こ、これはまじのやつだ。

うそじゃない。


もしかたら違うなんて思ってたけど、うそ。


絶対あれしかない!!

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