お嬢様、今夜も溺愛いたします。
分からない私に痺れを切らしたのか、ググッと眉間にシワを寄せる黒木さん。
って、どうしてここで界さんの話?
「下の名前もなにも、今日の昼休みに界さんがそう呼んでくれって……」
年上の方だし、最初は苗字だったけど、界さん嫌がってたし……
「だったら、私のことも呼べますよね?」
「えっ?」
ち、近い近いっ!!
ずいっと詰め寄ってきたその表情は、問答無用と書かれている。
「界を下の名前で呼べるなら、当然執事である私のことも同じように呼べますよね?」
「………」
「呼べますよね?」
「………」
「お嬢様?」
「はい……」
正直、界さんと黒木さんとでは同じ男の人でも簡単じゃないっていうか。
界さんは紗姫の執事だからっていうのもあるし、見た目は女の人だからっていうのもあった。
でも黒木さんは……
「さあ、お嬢様」
私が意識してる1人の男の人、だから。
めちゃくちゃ緊張するんだけど……