お嬢様、今夜も溺愛いたします。
「……さん」
「聞こえません」
「とう、やさん……」
「もう一度」
「十、夜さん……」
「ちゃんと私の目を見て」
「っ〜!!」
固定された手は離されたものの、グイッと顔を黒木さんの方へ向かされ、期待した目が私を射抜く。
ただ名前を呼ぶだけなのに、黒木さん相手だとどうしてこんなにも緊張しちゃうんだろう。
「十夜さん」
「っ!!」
「ちょっ、黒木さん!?」
ぎゅううっと強く覆いかぶさるように抱きしめられ、息がとまりそうになる。
く、苦しいっ!!
「もう戻っていますよ、お嬢様。
これからはちゃんと、十夜さんって呼んで下さいね?」
「は、い……」
嬉しさで弾むような声で囁かれてしまえば、頷くしかできなくて。