お嬢様、今夜も溺愛いたします。
──────────


「紗姫は界さんにあげたりしないの?」


6限目。

一日の最後の授業が家庭科。


型取りをする私の隣で、ただその作業を見ていた紗姫に聞いてみた。


「俺、料理とかそういうのほんと苦手で。一度作ってみたことあるけど、食べれたもんじゃなかったし」


「そ、そっか……」


椅子に座ってズーンと落ち込む紗姫に私は微笑む。


「もしかして紗姫、ちゃんと分量とか計らなかったんじゃない?」


「え?」


「ご飯を作るならそんなに問題ないと思うけど、それがお菓子なら話は別。目分量だとだいたいうまくいかないから」


お菓子作りって、一つ一つの材料のグラム数が決まってるから念入りに計らないといけない。


それを怠ると固まらなかったり、パサパサになったり。


昔はよくそれで失敗して、何度も材料を買い直しては作り直すを繰り返してたっけ。


「今は私もいるし、少しでもいいからやってみない?界さん、喜ばせてあげたくない?」


「界を喜ばせる……」


「そうそう!」


紗姫、ほんと可愛い。

苦手なことなのに、界さんのためならって頑張ろうとする。

恋する乙女は無敵だね。


「分かった。頑張ってみる。
美都先生、よろしくお願いします!!」


「ふふっ!
一緒にとびっきりのクッキー作ろうね」


「おう!」
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