お嬢様、今夜も溺愛いたします。


艶やかな黒髪が枕の上にあるのを見て、寝ているのだと確信する。


そして、ベッドサイドにある椅子にゆっくり腰かけた途端。


「暑い……」


十夜さんは寝返りを打った。


ひぃぃぃぃっーーー!!!


飛び込んできた光景に思わず両手で顔を覆った。


色気が大渋滞っ!!


熱で火照った頬、汗ばんだおでこに張りつく前髪。

閉じたまぶたに影をつくる長いまつげ。

暑いとはだけたシャツから見える上半身。


心臓がバックンバックンと暴れ始める。



やばいやばいやばい。

これじゃ変態と一緒だ。


クラっとめまいがする頭を押さえて、なんとか椅子に座り直す。


汗すごいし、タオルタオル……


ベッドの頭上に置いてあったタオルに手を伸ばし、そっと拭こうした瞬間。


ズルっ


!!?


ベッド下に引いてあったラグがすべり、私の体は十夜さんの上へと倒れていく。

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