お嬢様、今夜も溺愛いたします。


とろけたようなあまったるい声。

心臓を撃ち抜かれたかのように、身体に電気が走ったみたいになる。


今一瞬、世界がお花畑に見えちゃったよ。


普段クールで淡々とした人が、熱に浮かされてここまで変わるだなんて。


風邪って恐ろしい……


「ご飯は食べました?」


もうこうなったら恥を捨てて、今日は十夜さんに尽くすとしよう。

風邪を引いて、ましてや思考もままならない人が変なことしてくるだなんて思えないし。


「まだです。
それよりも、お嬢様の作って下さったクッキーが食べたいです」


「クッキーですか?」


「はい。私のためにとお嬢様が愛情たっぷりに作って下さったのですよね。昨日、食べ損ねましたし……」


シュンと落ち込んだ声に、頭をポンポンとなでる。


なんだろう、さっきから。

相手は十夜さんのはずなのに、大きい子供を相手してるみたい。


くそぅ……

不覚にもめちゃくちゃ可愛いと思ってしまった。


「大丈夫です。元気になったら、いくらでも作ってあげます。昨日のだってちゃんと残してありますし。今はとにかく胃に優しいもの食べましょう?ね?」


「分かり、ました……」


なんだろうこれ。

きゅんきゅんがとまらない。


ギャップの破壊力。

萌の最強地?


もう、やばすぎです……

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