お嬢様、今夜も溺愛いたします。


「はぁ、やっと寝てくれた……」


スースーと寝息を立て始めた目の前の人を見て、ため息をついた。


寝るまで長かった……

にしてもこの人、熱出すとほんと人が変わったようになるなぁ。


弱ってる時こそ本性が出るっていうけど、もしかして十夜さん、本当はめちゃくちゃ甘えたさんだったりして……


ふふっと1人笑いながら、端正なその顔を見つめた。


早く治して下さいね。

ずっとこんな調子じゃ、私まで熱出そうだし。


よし、寝てくれたことだし、水を絞ったタオルでも持って……


ってあれ?


身体が動かない。


背中と腰に回された腕をなんとか外そうとするも、相当力が込められているようで、離れられない。


熱があってしかも寝てるのに、ここだけはしっかりしてるのね。


しょうがない。

十夜さんが起きるまで、今はそばにいよう。


そう心に決めた私は、早く治りますようにという願いを込めて、もう一度布団をかけ直した。

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