お嬢様、今夜も溺愛いたします。


「す、すいません変なこと言って。
早く行きまし─────」


早くこの場から逃げたい。

そう思って後ろを向いて歩きだそうとしたのに、


「反則ですよ、お嬢様」


肩を引かれて、後ろから抱きつかれた。


「と、十夜さん!?」


「ほんっと可愛い。めちゃくちゃ可愛い。世界一可愛い。もう何なんですか?」


「お、落ちついてください十夜さん!!」


な、なんか早口で色々言われた気がするけど、とりあえず十夜さんがやばいということ。


「私を萌え殺しにさせる気ですか?お嬢様に殺されるなら本望ですけど」


「なにバカなこと言ってるんですか!
早く行きますよ!」


殺すって……

その前に私が十夜さんの色気パワーで殺されるわ!!


「あ、お嬢様」


「へっ?」


プンプンと怒って部屋を出ていこうとする私に、


「忘れものです」


「っ!!」


頭をポンっとして頬に口づけを落とす。


「私は外で待っておりますから、落ちついたら来てくださいね」


脳が疼くほど甘い声が、鼓膜を震わせる。


「そんな真っ赤な顔をされていては、外であろうが私が我慢できなくなりますので」


では。

クスッと笑う声とともに閉められたドア。


「ほんと、むり……っ」


途端にふっと膝の力が抜けて、私はその場にズルズルと座り込んだ。

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