お嬢様、今夜も溺愛いたします。
──────────


「今日はどこに行くんです?」


リムジンに揺られながら、隣に座る十夜さんに聞いてみた。

せっかくのお出かけだからと今は別の執事さんが運転をしている。


「着いてからのお楽しみですよ」


「む……ケチ」

「そんな可愛い顔してもだめですからね?」


!!?

ツンっと頬を押されて、目を白黒させる。


最近この人の手のひらの上で転がされているような気がするのは気のせいだろうか……


「いってらっしゃいませ」


恭しく一礼した執事さんにお礼を言って歩き出す。


「あの〜十夜さん?
腰に手、回ってるんですけど」


このやり取り、前にもした気がする。


「分かってますよ?
すれ違う男がみんなお嬢様を見ているので、牽制してるんです」


「け、牽制?」


「そうです。それにお嬢様も、本当は内心嬉しいのではないですか?」


すると立ち止まって、私の顔を覗き込んできた。


「私に寄ってくる女に、私にはお嬢様というめちゃくちゃ可愛い方がいることを知らしめることができますから」


「えっ……」


「先程私の私服姿を見たお嬢様が、少し暗い表情をされたのを私が見逃さないとでも?」


!!?


かぁっと顔が赤くなるのが分かる。


ば、バレてたんだ……

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