お嬢様、今夜も溺愛いたします。
「わあっ!!」
青空の下、辺り一面に広がる広大な秋桜。
白、ピンク、赤、黄色。
色とりどりに咲く秋桜が風に揺れて、ほんのり上品な香りを生み出している。
遠くの方にはサルビアやコキアも見える。
「ここは秋に見頃を迎える花ばかりを集めた花畑なんです。お嬢様は大の花好きですから、一度見せてあげたいと思っていました」
私をそっと下ろしながら、話し始めた十夜さん。
「そう、だったんですか……」
見渡す限りの花々。
澄んだ空気と心地のいい風。
そして心安らぐ優しい香りが体を包む。
ああ、ほんとに生き返る。
「お気に召されたようですね?」
「はい。とっても……」
風でなびく髪を押さえながら、もう一度秋桜畑を見渡した。
両親が他界し、実家のお花屋さんが閉まって。
埋めつくさんばかりのお花を見ることはもう二度とないと思ってた。