お嬢様、今夜も溺愛いたします。
「十夜さん。隣にいますか十夜さん」
「はい。ちゃんとお嬢様のお傍におりますよ」
「いいですか、絶対に離れないで下さいね?
どっか行っちゃったら私、今度から十夜さんのこと無視します」
「それは困りましたねぇ。
でも無視されるっていうのも、またなんかイイ……ですよね」
「頭湧いてるんですか?」
真っ暗な通路。
遠くの方で聞こえる悲鳴。
そして。
「きゃぁぁぁぁーーーっ!!!
十夜さっ!あれっ、あれぇぇぇーーーっ!!」
「ほぉ。
これはまたすごい作りになってますね。
お嬢様、見てくださいよこの人。頭かち割れてますよ」
「正気ですかっ!?」
十夜さんの腕にぎゅっとしがみつき震える私の横で、ニヤリと笑いながら頭をぽんぽんしてきた。
「心配しなくて大丈夫ですよお嬢様。
お嬢様からこんなにぎゅっと抱きつかれて、私今にも天まで昇りそうなくらい幸せなので」
「バカなこと言ってないで早く出ましょう!?」
うー、こわい……
いくら安心安全の十夜さんがいるっていったってこわいことに変わりはない。
ちょっと物音が聞こえただけでも肩が上がっちゃうし、声出ちゃうし。
さっきから体が恐怖でプルプルしてる。
なのに隣の人ときたら。
ずっとそうやって怖がる私を楽しそうに見ている。
「十夜さんて、性格悪いんですね」