お嬢様、今夜も溺愛いたします。
「もう少しで出口ですよお嬢様。
あとちょっと、頑張りましょうね」
「ううっ……」
やっと希望の光が見えた。
出られる。
そう思った瞬間だった。
「ぎゃぁぁぁーーーっ!!!」
「お嬢様!?」
運悪く、十夜さん側じゃなく、私側から出てきたそいつ。
目の前に今までのと比にならないくらい見上げるほど大きいゾンビ。
身体中血だらけだし、変なものグサグサ刺さりまくってるし。
最後の砦、ラスボスって感じ。
「ひっ!!」
恐怖で足がすくみ、歯がガチガチいう。
もういやっ、こんなとこ……
そう思ったら涙が出てきた。
こんなことになるなら、ちゃんと入る前に断れば良かった。
私っていつもそうだ。
自分の言動にあとから後悔するタイプ。
素直にこわいって言えないところとか、いやだから違うの乗りに行こうって甘えられない。
どうしてこうも、可愛くない女なんだろう。
ますます視界がぼやけて、前が見えなくなってくる。
「お嬢様」
いつの間にかその場にペタンと座りこんでしまった私の前にしゃがんだ十夜さん。
「言って、いいんですよ」
「え……?」
「素直に、こわいって」