お嬢様、今夜も溺愛いたします。

「あのー、着替えましたけど……」


渡されたドレスに身を包み、一緒に置かれていった高いパンプスも履いた。


にしても。

似合わなさすぎる……


全身鏡を見て、ガクッと落ちこむ。


大人っぽすぎる黒のスリムドレス。

レースとはいえ首も詰まってるし、五分袖まであるから上は全然いいんだけど……


下がものすごく恥ずかしい。


足首から左太ももにかけて、横にガバッとスリットが入っている。

片方だけど横から見れば、大胆すぎるこれ。


き、着替えたい……


鏡から視線を外し、背中のチャックに手を回そうとすると。


「あら素敵!!
可愛すぎです美都様!!」


なんの断りもなしに入ってきた宇川さんは上から下まで私を眺め、にやりと笑う。


「ちょっと!?
ノックくらいしてくださいよ!!」


「だって早く見たくてうずうずしちゃって。にしても、本当にキレイ!!」


「そう、ですか?」


「ええっ!
それはもう!!」


目をキラッキラさせてきゃー!!と叫んでるけど、私にはさっぱり。


着られてるっていうか。

服が浮いてるような気しかない。


「これでも十分お綺麗なのに、髪も整えてお化粧までしたら、黒木様も我慢出来ませんね」


「我慢て?」


「いえ、なんでもないですよ〜
さあさあこちらへ」


「はぁ……」


一瞬真顔になったかと思うと、すぐに笑顔で色んなメイク道具が置いてある鏡の前へ誘導される。


「もっともっと綺麗になって、あのクールフェイスをデレデレにしてやりましょう!!」


フンっ!!を意気込む宇川さんは、私にメイクを施していく。
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