お嬢様、今夜も溺愛いたします。
「美都様は元々美人系の顔立ちですので、やはり黒が映えますね。これなら黒木様も惚れ直すこと間違いなしです!」
「あ、ありがとうございます?」
惚れ直すって。
別に十夜さんは……
「さあさあ、黒木様がお待ちですよ!!
大人っぽくなった美都様を見せつけてやりましょう!」
「はっ、はい!」
ふっと現実に引き戻され、宇川さんに手を取られる。
「お足元、お気をつけ下さいね」
「ありがとうございます」
そしてゆっくり部屋を出る。
「お嬢、様……?」
ドア近くにあるソファーで待っていた十夜さんがバッと立ち上がって駆け寄ってきた。
「と、十夜さん?」
途端に私をガン見し、黙りこくってしまった。
そんなに似合わなかったのかな。
胸にズキっと痛みが走って、気まずくて俯いた時。
「宇川さん、ちょっと席外してもらえます?」
「絶対そうおっしゃられると思ってました。
お2人がおられる部屋には絶対に近寄りませんので、ご安心を」
「どうも……」
「気持ちは分かりますけど、いつもより何倍も気合い入れてメイクさせていただいたので。また一から直さないといけないってことにならないようにして下さいよ?」
「善処します」
な、なんの話?
頭にハテナが浮かぶ私の手を取ると、さっき出てきた部屋へと誘導する十夜さん。
「ごゆっくり☆」
最後にバチコーンと宇川さんがウインクをしてきたけど、まったく意味が分からなかった。