お嬢様、今夜も溺愛いたします。

「で、でも十夜さんの手、冷たい……っ」


「大丈夫。すぐ暑くなるから」


途端に。


「ひゃっ……ぁ」


背中に口づけが落ちてくる。


「ほら。もう身体、熱くなってきた」


「っ……」


クスリと笑って、また降ってくる。


あんなに冷たいと感じられた体温が、今はやけどしそうなほど熱い。


耳に、うなじに、背中に。


ふれられたところから、じわじわと全身に熱が広がっていくみたいで。


「ん……はぁ…っ」


「可愛い……
その声、もっと聞かせて」


我慢しようと思っても、どうしても出てしまう声。


身体が一つ一つに反応して、

耳をかすめた唇が、鼓膜が震えるほど甘ったるい余韻を残す。


「ひゃっ……ぅ」


うなじのある部分を強く口づけられて、吸われる。


「俺のものってしるし」


ふっと笑った気がするけれど、私はすでにいっぱいいっぱいすぎて。


「っ、じれったい。
こっち向いて」


与えられる熱にされるがままでいたら、少し強引に正面を向かせられた。


「美都」


ぼーっとして、頭がクラクラする。

潤む視界の先で見えたその目は、ぎらりと光って濡れているようで。


「十、夜さん……?」


ただ壁に背を預け、うまく力が入らない私との距離をゆっくりゆっくりつめてくる。


「もう、我慢なんてしない」


長いまつげが伏せがちになって、唇に熱っぽい吐息がかかった瞬間。
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