お嬢様、今夜も溺愛いたします。


「くーろーきー様!!」


!?


「リムジン、待たせてますよ!!」


ドアがドンドンと叩かれる音がして、宇川さんのイラついたような声が聞こえてきた。


「まったく。いつまでイチャイチャしてるんですか!ここはお店ですよ!」


「………」

「………」


甘いムードをぶちこわす怒鳴り声に、十夜さんは苦虫を噛み潰したようにゆっくり私から離れた。


「はぁ……いいとこだったのに」


今にも舌打ちしそうな十夜さんの目の前で私の頭はすっからかん。


え?

今。


キス、されそうになったよね?


顔めっちゃ近かったし。


もし、宇川さんが呼びに来てなかったら……


「うわぁぁぁっーー!!」


「お、お嬢様?」


頭を抱えてその場にしゃがみ込むと、とまっていた思考が一気に動き出す。


心臓がバクバクして、息も乱れて。


されるがままに目閉じちゃってたけど、

もしあのまま、十夜さんの唇が私の唇に重なってたら……


ひぃぃぃーーっ!!


「十夜さんっ!!」


「え?」


「は、はやく行きましょう!?
リムジン待たせてますし!」


未だ絶賛不機嫌中の十夜さんの手を引っ張り、ドアの方へ行こうとすると。


「お嬢様」
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