お嬢様、今夜も溺愛いたします。


「お嬢様が、私を意識していることは分かっています」


「えっ!?」


「さっきのキスも、抵抗できたはずなのにされませんでしたよね。私と抹茶ケーキを食べたあの夜も。熱い夜を期待、されてましたよね?」


「い、いわないでくださいぃぃーーっ!!」


顔を覆う私の髪に、クスクス笑いながらキスを落とす。


「急がなくても大丈夫です。
お嬢様が心から私を好きだと思って下さったその時まで、私はずっと待っていますから」


「十夜さん……」


「それに、楽しみはあとにとっておく方がいいとも言いますしね?」


「なっ!?」


言葉も出ない私に、より一層いじわるな笑みを向ける十夜さん。


もう、頭がおかしくなりそう……


「私がお嬢様を好き、それだけを覚えていて下されば結構です。だから今は、無理して私の気持ちに応えなくても大丈夫です」


「わかり、ました……」


十夜さんの言う通り、確実に気持ちは傾いている。


でも、まだ。


まだ何かがたりない。


十夜さんを好きだと思える、決定的ななにかが。


過去の記憶のことだって本当は教えて欲しいけど、自分でちゃんと思い出したい。


十夜さんはその時からずっと、私を思ってくれているから。


その気持ちに私もちゃんと応えたい。

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