お嬢様、今夜も溺愛いたします。
「てなわけで、紗姫もバイトしたいらしいんですが……」
「それは構いませんが……」
「なに?
俺がいると不満?」
「いえいえ。
別にそういうわけでは」
「なら、そんな嫌そうな顔する必要はないよな」
「………」
この2人、仲がいいんだか悪いんだかわかんない。
おじいちゃんとの空気感もそうだけど、十夜さんは何が気に入らないんだろう?
「分かりました。
ですがここでの店長は私、ですから。
どうぞよろしく」
「えっ、十夜さんが!?」
放課後。
紗姫と一緒にお店にやってきた私。
今日がオープンで忙しいという十夜さんではなく、別の執事さんが迎えに来たのだけど……
まさか、店長さんになるだなんて。
おじいちゃんがOKしたってことにまず驚きなんだけど、まだ大学生なのにってところが1番すごい。
「はい。
私が先頭に立って動くと言ったのはもちろんですが、なによりも元々このお店で働くのが夢でしたから」
「夢……?」
首を傾げる私とは裏腹に、はっはーん?とニヤニヤし出す紗姫。
そんな紗姫をジト目で見つつも、十夜さんはコホンと咳払いをした。
「とにかくです。
以前圭人様のお手伝いをされていたということで、お嬢様には八神様のサポートに回っていただけますか」
「分かりました」
十夜さんと同じく、お店のエプロンを身につける。
さすがに上着とベストは着てないものの、ネクタイはしてるし、執事服とはほとんど大差ない格好の十夜さん。
「それと、八神様」
「なんだよ?」
「雇うということ自体は全然構いませんが、着替えて下さいね?」
「は?」
「店長の特権です」
怪訝な顔をした紗姫に十夜さんは、圧の強い視線を向けていた。