お嬢様、今夜も溺愛いたします。
「一色のことが気になるのですか?」
途端にまたムスッとしたような表情になって、慌てて違いますよと訂正する。
「十夜さんと仲の良い方なら、知っておきたくて。前に十夜さんが言って下さったように、私も十夜さんのことをもっと知りたいですから」
手にしていたサンドイッチを置いて、まっすぐ十夜さんを見つめる。
一瞬ぽかんとしていた十夜さんだったけど、ふいに視線を逸らされた。
「自分で聞いておきながら、めちゃくちゃ恥ずかしいです。ですが、お嬢様にそう言っていただけるようになるなんて、だいぶ進歩しましたね」
なんて目を細めて嬉しそうに笑う。
「一色はいとこです」
「いとこ?」
「はい。一色も同じ星水学園大学に通う3年、私とは同い年です。あいつは界や私とは違い、体育学部ですが」
体育学部……
確かに運動してそうな人だったかも。
そうじゃなきゃSPなんか務まらないだろうし、なによりも言われてみれば容姿もめちゃくちゃ整ってたっけ。
いとこって聞いて、なんか納得。
「私や界のように執事をバイトとする者もいますが、中には一色のようにSPをしている者も少なからずいます」
「そうなんですか」
大学生が、執事にSP。
すべて現実のことなのに、未だ現実には思えないほど。