お嬢様、今夜も溺愛いたします。
コンコンと部屋をノックする音が聞こえて、はいと返事をする十夜さん。
「どうされました?」
ひょこっと顔を出したのは以前、十夜さんの部屋へと連れて行ってくれたメイドさん。
目が合うと優しく微笑んでくれたので、私も一礼しておいた。
「今、エントランスに月菜(ルナ)様が……」
「え?月菜が?」
月菜?
外ではあんなにクールな十夜さんが女の子を呼び捨てするなんて珍しい。
そう思っていると。
「十夜ーーーーっ!!」
バタバタっと走る音が聞こえた後、メイドさんを押しのけ、部屋へと入ってきた1人の女の人。
「月菜!?」
驚く十夜さんに、ガバッと正面から抱きつくその人。
「会いたかったよ、十夜〜!!」
すりすりと胸に擦り寄るようにして抱きつくその人の容姿に私はびっくり仰天する。
「び、美人っ!!」
身長は私と同じく155cmで小さめなのに、何倍も大人びて見えるその人。
艶々のストレートな黒髪は背中の半分を隠し、白い肌と赤く色づいた唇が、くっきりとした目鼻立ちを強調していて。
メイクもしているせいか、界さんとはまた違って魅力的な大人の女性って感じ。
歳は私よりも確実に上な気がする。
じーっとその女性を見ていると、バチッと目が合った。