お嬢様、今夜も溺愛いたします。
この人、いつの間に……っ!!
気づけば、私の背の後ろの窓に片手を付き、至近距離で微笑む黒木さん。
「お嬢様の専属執事を務めさせて頂きます、黒木 十夜(クロキ トウヤ)と申します。この身をお嬢様に捧げる所存ですので、どうか末永く、よろしくお願い致します」
「だから、お嬢様って呼ぶのは……っ!?」
右頬をすべる白い手袋。
ふわっとかきあげられた前髪。
そして、
「なっ、なにを……っ」
「今日からあなたには、ここのお嬢様になっていただきます」
“ もしこれ以上ご不満があるようでしたら、もう一度……今度はおでこではなく、唇に口づけさせていただきますが ”
そっと耳元で囁かれた言葉と、笑いを噛み殺したような声。
こんな……
こんなの………
「は?はあぁぁぁーーー!?」
誰か、夢だと言って下さい……
一般庶民の私、今日からお嬢様になります。