お嬢様、今夜も溺愛いたします。
バイトを始める初日。
十夜さんはうちのお店で働くのが夢だって言ってた。
ずっと気になってたんだよね。
すると十夜さんはあー……っと、どこか照れた様子で話し始めた。
「昔入院していた頃、お嬢様や圭人様に作っていただいたブーケやアレンジメントは私に生きる元気をくれました。お二人のお姿を見て、病気に治療に頑張るたくさんの人を元気にさせる花屋の仕事をしてみたいと思うようになったんです」
「そうだったんですか……」
「経営学部に進学したのもそれが理由です。
いつかお嬢様を迎えに行った際、少しでも圭人様たちの力になれたらと思って」
十夜さんの夢。
それは私の隣にいることだけじゃなくて、お父さんたちのことも考えてくれてたんだ……
その事実が嬉しくて、またじわっと目元が熱くなる。
「他には聞きたいこと、ありますか?」
私の頭をなでながら、優しい声で問いかけてきた。
その言葉に、もう一つずっと思っていたことを口にした。
「……敬語って、外せないんですか?」