お嬢様、今夜も溺愛いたします。



「それにこの前病室では敬語、外してたじゃないですか。だから、どうなのかなって」


「………」


急に黙り込んでしまった十夜さん。

聞いたらいけないこと、だったかな。


またじわっと涙が浮かんできたところで、十夜さんははぁっと深くため息をついた。


「……旦那様がお傍にいない限りでは外すことはできます。ですのでこうしている間も外すことは可能です。ですがしません」


「なぜですか……?」


すると、グッと手を引き寄せられて鼻がぶつかりそうなほど近い距離になる。


「とっ、十夜さん……っ」


「ほら、その表情」


「え……?」


「ただでさえお嬢様とこうしてふたりきりでいることが多いのです。そうやって照れた顔を見るだけで私は執事ということも忘れて理性がぶっとびそうになるんです」


「え、えーと……それは、つまり?」


「お嬢様とお付き合いできることになった以上、彼氏として隣にいられます。ですが敬語を外せば尚更それを自覚して、ところ構わず押し倒したくなるので」


「………」


「簡単に言えば、我も忘れて襲いたくなるということです」


!!?


困ったように笑う十夜さんに、全身が燃えそうなほど熱くなる。


つまりは、私のために、我慢してるってことだよね?


だったら……


「……やっぱり、敬語外して下さい十夜さん」

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