お嬢様、今夜も溺愛いたします。
──────────


「お嬢様、そろそろでございます」


「わ、分かりました」


い、いよいよね。


スピーカーを通して聞こえてきたその声に、気合いを入れる。


昨日お屋敷に来るまでに乗ったあの長いリムジン。


どうやら、私が乗っている後部座席と黒木さんがいる運転席とは離れすぎていて声が聞こえないため、後ろにスピーカーがついているらしい。


それだったら、普通の乗用車に乗ったらいいのに……


なんて思っていたのも束の間で、見えてきたその光景に、開いた口が塞がらなくなってしまう。


「こ、これが学校っ!?」


「はい。
今日からお嬢様が通われる、星水学園でございます」



「…………」


ここは、ホテルか何かですか?


お屋敷と同じく、もちろん敷地はどれくらいかなんて図り知れないんだけど、それよりも……


「あれは?」


「噴水でございます」


「その向こうにあるのは?」


「薔薇園と、馬術場でございます」


「あの建物は?」


「屋内プールでございます。今流行りのウォータースライダーも楽しめますし、冬でも暖かい、温水プールもございます」


「…………」


し、信じられない……


高校に、そんなものがあってたまるかーーー!!!


普通は校舎とグラウンドと、体育館と。

あって、プールや部活に使う練習場でしょーが!!



やばい。


頭がクラクラしてきた……



お金持ちって、これが普通なの?


唖然として言葉も出ない私に、黒木さんは追い討ちをかけるように言った。



「お嬢様がご使用になることはないとは思いますが、ゲームセンターやボーリング場、ゴルフ場もございますので」



ええ、もちろん使いませんとも。


ふつーの学校生活を送りたい私は、学内にそんな施設があろうとも、絶対に行きません!!


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