お嬢様、今夜も溺愛いたします。
「キャーーー!!!」
「く、黒木さまぁぁぁーーー!!!」
「今日も今日とて、なんてイケメンなお姿なの!!」
あ、そういうこと?
歩き出す私達に向かって、より一層騒がしくなるお嬢様たち。
しかも、まるで芸能人でも見るかのように、押せ押せ状態。
確かに黒木さん、初対面でも驚くくらいのイケメンだし、これだけ騒がれてもおかしくない……
っていうか、別にお嬢様じゃなくても、女子だったら誰でも叫ぶかも。
私の場合は叫ぶんじゃなくて、黙る方だったけど。
にしても、少しならともかく、ここまで騒がれるのは……って!?
「ちょっ、黒木さん!!?
なんでこんなに距離近いんですか!?」
腰に手、回ってるんですけど!?
「お嬢様が私のものだということを、この学校の男共たちに知らしめるためです」
「わ、私のもの?」
まあ、確かに黒木さんは私の執事ではあるけど……
てか、男共って……
口、悪くなってません!?
「ふふっ、そういうことではないのですが……でも、そんな鈍感な所も好きなんですけれど」
「え?」
「本当に可愛いですね、お嬢様は」
回った腕に、ぎゅっと力がこもる。
さっきから数え切れないほどのお嬢様たちから騒がれてるのに、その間もずっと私の方を優しい目で見ている黒木さん。
ううっ……
距離も近いし、なんだか妙にくすぐったいから、やめて欲しい……
「あの、別に執事だからって、ずっと私の方を見ていなくても……みんな黒木さんを見ていますし……」
「全く興味ございません。というより、私にはお嬢様しか考えられませんので。それ以外なんて、私にはじゃがいもにしか見えておりません」