ペーパーみんと
起きてからだいぶ時間が経ったあと、
やっと私はパンを焼き始める。
それもトースターじゃなくて、ちゃんとフライパンに油をひいて。
トースターはあるのにずっと使っていなくて、おそらくもう埃かぶっていて可哀想な容姿になっているのだろう。
なんだろうか、フライパンを使って焼くパン自体は格段美味しいわけではないのに、時間をかけて自分で焼いたという事実が、それに一種の価値を見出すことができる。
まぁ、ある種のこだわりってやつだ。
とくに、これといった理由はない。
キッチンの引き出しに閉まってあるバージンオイルを手に取って、少しベタベタしている蓋を気にせず回す。
そのボトルを少し傾ければ、独特な香りと共にお馴染みのオリーブオイルがフライパンの上に注がれる。