強引な副社長との政略結婚は甘すぎます

「うわー、見るだけで幸せよね」
先輩の声に、私もまわりをキョロキョロと見渡した。

今日このフロアを出たり入ったりしていた、晃さんが帰る所のようでその周りの女子社員が一斉にそちらを見た。
先輩もそちらの方に目を向けている間に、どうにか予定があると断ろうと私は決心した。

「先輩。すみません。私今日用事があって……」
「え?何?」
晃さんに気を取られていた先輩は、私の話を聞いていなかったようで、私に聞き返した。

「今日は予定が……」
「そうなの?ちょっとだけでも、初めだけでいいから。用事何時から?結構いいメンツなのよ。銀行員とか、公務員とか」


銀行員だろうが、公務員だろうが、大手商社マンだろうが……。
今は無理なのよ。
不倫になっちゃうのは相手にも悪いでしょ?
そんな事もいえる訳もなく、用事がという私と、何の用事?と聞く先輩のそんなやり取りの上から声が聞こえた。


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