強引な副社長との政略結婚は甘すぎます

「どこって……」
晃さんのその声と、ポンという軽快な音が同時にして、エレベータの扉が音もなく開いた。

私はその目の前に現れた場所に、「やっぱりな」と小さくため息をついた。

「あの、晃さん会社では……」
「もう誰もいないから大丈夫だよ」

私の言葉を遮っていった、晃さんの言葉通り、定時がすぎたばかりだというのに、目の前の豪華な受付には、いつも座っているだろう受付嬢の姿はなく、役員フロアは静まり返っていた。

「やけに静かですね……」
きょろきょろと初めて入る、一般フロアとは全く違う場所を私は見渡した。

「ああ、今日はみんな出払ってる」

「へえ、そうなんですか」
そう言う事もあるんだと、私は納得しつつ、誰もいない状況に安堵した。

「あれ？じゃあなんで来たんですか？」

私の問いには返事をしてくれず、晃さんはそのまま一つの部屋を目指して歩いていった。