強引な副社長との政略結婚は甘すぎます
そしてあれよあれよと、私は高級そうなお店に放り込まれ、たくさんの人に取り囲まれた。

あーでもない、こーでもないと私の意志など、全く気にしないといった人々に言われるがままに、ドレスを着て、化粧を施され、髪もセットされた。

こんなに化粧をしたのは、生まれて初めてで、鏡の中に映った私は、自分で言うのは恥ずかしいが、いつもの私より、数倍華やかで、多少はキレイになった気がした。

でも……このドレスは……。
ボルドーのシックなワンピースは、いつも隠すようにしていた体のラインが出るタイプのもので、かなり恥ずかしい。

「あの……やっぱり……」

「このドレスは着られない」そう言おうとしたところに、晃さんが言葉を挟んできて私は言葉を止めた。

「お姫ちゃん、すごくかわいいよ」
晃さんが、口笛をふきながら冷やかすように言って、私は更に恥ずかしくなって俯いた。

「あの……晃さん、私やっぱりこんなドレスは着られないです……」
泣きそうになりながら言った私の言葉に、晃さんはジッと私を見据えた。
< 111 / 218 >

この作品をシェア

pagetop