強引な副社長との政略結婚は甘すぎます
3人でパーティー会場へと入ると、ものすごい数の視線が突き刺さる。

「翔太郎さんよ!」
「だれ?あの一緒の女性は?」

飛び交う言葉と、容赦のない視線に足がすくむ。


「大丈夫だ」
腰に手を回され、グイっと抱き寄せられ耳元で言われた言葉に、少しだけ息ができた気がした。

あっという間に、翔太郎さんの周りに人が集まりだして、改めてこの人のすごさを実感した。


仕事の話や、お父様へのお祝いの言葉に間に、当たり前のように私へ声をかけられる。
直接どういう間柄か聞く人はいなかったが、明らかに探りを入れるような言葉もあり、私は言われた通りとりあえず笑顔を作り続けた。

「ご無沙汰してます。河野社長」
また社長……そう思いながらも、次に現れた50代ぐらいのご夫婦に私は笑顔を向けた。

「翔太郎君も立派になったな。そろそろ……なのかな?」
その言葉に、チラリと私に視線が向けられ、私はにこやかに笑顔を作ると、「初めまして」と頭を下げた。

「あら?そうなの?私はてっきり……」
年齢が解らないぐらいのキレイで妖艶な大人の女性の迫力に、内心視線を逸らしたいのを何とか我慢した。

「てっきり何ですか?幸子おばさん」
少し苛立ちを含んだ翔太郎さんの声音に、私は顔がこわばってしまい、慌てて笑顔を張り付けた。

おばさんって言った?

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