強引な副社長との政略結婚は甘すぎます
「あッ……」
15メートルぐらい先に一際人だかりができていて、その中心にいるのが、社長、すなわち翔太郎さんのお父様だとわかり、私に緊張が走った。

チラリと翔太郎さんを見上げると、今まで見たことないぐらい、冷たい視線でお父様を見ていた。

なんで?
お父様だよね?

今まで全くと言っていいほど、家族の話を聞いてはいなかったが、翔太郎さんの表情だけで、一般的な愛情あふれた家庭で無かった事が想像でき、挨拶をしたいと言った時の翔太郎さんの反応が腑に落ちた。


そんな事を思っていると、ギュっと力強く翔太郎さんに手を握られて、私は翔太郎さんを見つめた。
繋がれた手から、なぜか翔太郎さんが緊張しているように感じて、私も手を握り返した。

その行動に翔太郎さんが私を見た。
なぜか安心させたくて、微笑んで見せた私に、翔太郎さんも少し表情を緩めたように見えて少しほっとする。


「行こう」
そう言って翔太郎さんは、お父様に向かって歩き出した。

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