強引な副社長との政略結婚は甘すぎます
そのままお互い無言というより、翔太郎さんに話しかける雰囲気ではなく、私は大人しく車の後部座席に収まっていた。

「優里香。お腹空いた?どこかで食べて行くか?」

急に掛けられた翔太郎さんの言葉に、私は小さく首を振った。
パーティーには美味しいそうな料理がたくさん並んでいたが、到底食べる気分にもならないし、食べたくてもそんな事が出来る雰囲気ではなかった。

「翔太郎さんは?」

「俺は……そうだな。あまり食べたい気分じゃないかもしれないな」
疲労した様子で言った翔太郎さんを私は見据えた。

急に連れていかれた場所で起きたことに、聞きたい事もたくさんあるし、言いたい事も山ほど本当ならある。

でも、なぜか翔太郎さんに言う事ができず私は小さく息を吐いた。

「じゃあ、帰ってお茶漬けでもたべましょうか」
少し明るい声で翔太郎さんに言うと、なぜかホッとした表情をして私の肩を抱き寄せた。

「ありがとう」

政略結婚で、なにか複雑な事がたくさんあって、呪いとか、先祖だとか、大企業の跡取りだとか、そんな事はどうでもよくて、今ここにいる翔太郎さんを守ってあげたい。
私はそんな気持ちになっていた。


抱き寄せられたまま、私はそっと翔太郎さんのもう一方の手をギュッと握りしめた。


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