強引な副社長との政略結婚は甘すぎます
翔太郎さんの寝室の前で一息ついて、覚悟を決めた。
緊張がピークに達して、心臓の音がうるさい。
小さくノックをすると、すぐに返事とともにドアが開けられ、手を取られた。
そのまますっぽりと抱きしめられ、驚いて私は小さく身じろいだ。
「だって、こうやって捕まえないと優里香は逃げて行きそう」
クスリと肩を揺らして言った翔太郎さんの言葉に、否定することも出来ず、私は言葉に詰まった。
「そんなことは……ないです」
かろうじて言った言葉に翔太郎さんが、ホッとしたような表情をしてくれて私も安堵した。
先祖の呪いなどに振り回され、初対面の第一印象は最悪で。
そんな人と一緒にベッドに入ることになるなんて、世の中何が起きるかわからないな。そんな事を考えていると、ふわりと身体が宙に浮いて、抱き上げられたことに気づき、私はパニックになりかけた。
「え……?え!なんで!!」
そっとベッドに下ろされ、上から翔太郎さんに見下ろされる形になり、私はあわあわと狼狽して視線を彷徨わせた。