強引な副社長との政略結婚は甘すぎます
「ありがとうございます。出社するのが憂鬱だったんですよ」
泣きそうになりながら言った私の言葉に、
「本当に知らなかったのね。神崎さんが人気があること」

私はまたもや、驚いたように言われて、言葉を詰まらせた。

「はい……。だって私には無関係の人だったし、会った時は弁護士なんていってなくて、無職かなっておもってたぐらいだったので」

「無職って……またすごい誤解だね。それ」
会話をしたまま、エレベーターホールに付いて、チラチラとみられている様な視線に、息が漏れる。

「すごーい。もうこんなに噂って広がるんだ」
少し大げさに町屋先輩は言うと、私を見た。

「気にしなければいいのよ。別に何もしていないんだし、みんな笠井さんと知り合いになりたいんじゃない?」
その言葉に、周りの人が一斉に視線を背けた。

こういう時の町屋先輩は本当にありがたい。
こんな地味で下っ端の私をかばってくれて、クールな雰囲気で誰にも物を言わせない雰囲気を持っている。


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