強引な副社長との政略結婚は甘すぎます
「町屋先輩!すみません。残りの仕事は朝早く来ます!どうしても今日外せない用事があって」
めったにこんなことを言わない私の言葉に、先輩は少し驚いたような表情をしたが、
「もちろんいいわよ。明日の始業までには終わらせといてね」
優しい微笑みを見せてくれた、3つ上の優しい先輩に感謝しつつ、私は定時と同時に更衣室に向かった。

いつもなら一つに束ねている髪を下ろして、化粧のチェックぐらいはするけど、今日はそんな事をしている時間はない。

「オフィス1週間」と言う見出しの雑誌の、コーデそのままに買ったと言っても過言ではない、黒のパンツに、白のカットソーを急いで着て、朝は雑誌通り肩がけしていたモスグリーンのカーデガンを引っ掴むと、カバンを持って小走りにエレベーターへと向かう。

1階の吹き抜けになっている広いエントランスへ降りると、帰宅する社員や、営業からの戻りだろう人がたくさんいて、その中に紛れて、心の中でホッと息を吐いた。
20階建ての自社ビルは、エレベーターも三か所あるし、役員フロアは別エレベーターで地下駐車場へ直結のはずだ。

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