強引な副社長との政略結婚は甘すぎます
「いえ、なんというか……いまここに来て……」
「イケメンだった?」
珍しく町屋先輩が興味を持ったように言うので、私は苦笑しながら頷いた。
「まあ、きれいな顔をした人でしたよ」
「そうなんだ。なんか日本に戻ってきて、いきなりすごく大きな契約を取ったうえに、気さくであの容姿って受付の女の子たちが騒いでいたのよね」
思い出すように言った先輩は、ニコリと笑うと「私は興味ないけど」それだけ言うと仕事に戻っていた。
町屋先輩は女の私から見ても、魅力的だが浮いた噂を一度も聞いたことがなかった。
どうしてだろう?そんな事を思ったが、まださっきの瀬能さんの顔が頭からでて行ってくれず、私は頭を振るとその書類をもう一度みた。
ようやく仕事も終わり、ビルのエントランスを出ると不意に音をたてたスマホを私はカバンからとりだした。
あっ……。
翔太郎さんの文字を見て私は嬉しくなって、通話ボタンを押そうとした時、後ろから肩をたたかれ振り返った。