強引な副社長との政略結婚は甘すぎます
「優里香、おかえり。悪かったな、誰かといたから電話切ったんだろ?」
いつもと逆に、スエットにタオルを肩にかけた翔太郎さんの笑顔に出迎えられて、私は慌ててパンプスのストラップを外すために下をむいた。
そうだった……。瀬能さんに電話を切られたんだった。
「あっ、ただいまです……。今日は急にごめんなさい」
普通に言えた!と私は小さく息を吐くと、言葉を続けた。
「翔太郎さん、ご飯は?食べてないですよね?何かすぐに作りますね」
そういってニコリと翔太郎さんに笑みを向けて、翔太郎さんの横を通り過ぎてホッと息をはいた。
「うわあ!」
上ずった声が出てしまったのは、後ろから急に翔太郎さんに手を引っ張られドンと壁に背中を押し付けられたからだ。
これが壁ドン?
そんなどうでもいい言葉が頭をよぎったが、見上げた翔太郎さんの冷たい視線に背筋が冷たくなった。
「優里香……なにを隠してる?」