強引な副社長との政略結婚は甘すぎます
「もしもし?」
なにも言わない相手に、私はもう一度呼びかけた。
間違い電話?そう思い、受話器を切ろうとしたところで、
『あなただれ?』
落ち着いた女の人の声がして、私はドクンと心臓が音を立てた。
なんとかもう一度受話器を耳に当てて、問いかけられた質問の答えを考えた。
『翔太郎の新しい女?』
不躾な質問に、私は苛立ちを覚えた。
「はい」
驚くほど低い声が出て自分でも驚いていると、予想に反してクスリと笑い声が聞こえた。
『へえー、まあ、いいわ。翔太郎は誰にも本気にならないもの。愛とか好きとかそう言う感情が一番嫌いなのよ。知ってる?あなたに飽きたらまた私の所に戻って来るだろうし……。まあいいわ。じゃあね』
相手の女は言いたい事を言った後、私の言葉も聞かずに電話を切られ、私は呆然と無機質な音がする受話器を見つめた。
何?今の?
誰にも本気にならない?愛が嫌い?
じゃあ私は?なに?