強引な副社長との政略結婚は甘すぎます
翔太郎さんだ!
今、いつも通りに翔太郎さんと話す事なんて、到底出来る気もしないし、話したくなかった。
「優里香?入るよ?」
いつも通りの翔太郎さんの声に、また涙が溢れる。
ガチャガチャという音がしたあと、もう一度翔太郎さんの声がした。
「優里香?鍵かけてどうした?」
返事をしない私に、また翔太郎さんの声が耳に届く。
「眠ってる?」
不安げな声に、私の心が叫び声をあげる。
心配そうな演技やめて。本当は好きじゃないのに。
さっきの電話が真実か確かめることができない私に、翔太郎さんを責める権利なんてないとはわかっていても、さっきの女の人の、あざ笑うような声が頭から離れてくれなかった。
しばらくすると、階段をおりる音がして、翔太郎さんが諦めたのがわかった。
今は会いたくない……。枕に顔を埋めると、私はギュッと唇を噛み締めた。
明日は、いつも通りにしよう。
そう思ったが、まだこれから私をどん底に落とす出来事が待っていた。