強引な副社長との政略結婚は甘すぎます

初めから好きなんて感情を持ってはいけなかったのに……。
今更後悔してもどうしようもない事は自分が一番わかっていた。

なんとか化粧で顔を作ると、最近はかけていなかった黒縁のメガネを手に取る。
少しでも腫れた目を隠したかった。

翔太郎さんを避けて早く会社に行くことも考えたが、どう考えたってずっと顔を合わせないなんてことは無理だ。

覚悟を決めて下に降りると、キッチンにいた翔太郎さんが顔を上げた。

「優里香!」
少し切羽詰まったような声に、私の胸がキュッと音を立てる。

「おはようございます。ごめんなさい。頭痛がして寝ちゃってたみたいで……」

何度も練習した台詞を言うと、ホッとしたような翔太郎さんの表情が目に入った。
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