強引な副社長との政略結婚は甘すぎます
「ああ、大丈夫だ」
翔太郎さんは、あれ以来何も言ってくることはなかった。
あのままでは、社長の座は無理だと思っているはずだったが、何かを頼んでくることも、言う事もされなかった。

だからこそ、私はこの決心ができたのかもしれない。


「優里香……行ける?」
どういうつもりで聞いたのかなと思った。行かないという選択肢があるというの?
それを私は問うことなく家を後にした。

晃さんの運転で、翔太郎さんの実家へと向かう。
車の中は何の会話もなく、私はただ外の景色を見つめていた。

「お姫ちゃん」
そう呼ぶ晃さんの言葉に、私は初めにあったころを思い出してすこし懐かしくて微笑んだ。

「なんですか?」

「あのさ……」

「晃!」
何かを言おうとした晃さんの言葉を翔太郎さんが遮った。

「優里香はもう何も気にしなくていいから」
そう言った翔太郎さんの表情からは、何を考えているかはわからなかった。


静かに大きな門を入り、緑に囲まれた道を通ると目の前に現れた洋館に私は驚いてそれを見上げた。

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