強引な副社長との政略結婚は甘すぎます
理由はどうであれ、だまされた気持ちはあったが今ここで文句を言えるような雰囲気でもなかったし、言うつもりもなかった。
「それで?どうなんですか?」
少しいらだった様子で聞いた翔太郎さんのお父さんの声に、そこにいた親族たちが私の顔を一斉に見た。
「俺にチャンスありだよね?」
瀬能さんの言葉に、私はジロリと瀬能さんを見た。
結局引っ掻き回すために、この人も私に好意のあるふりをして近づいたことは事実だ。
実の父親なのに、こんな扱いをするお父さんにも、腹違いとはいえ兄に敵対心をもつ弟も、私からすれば全く信じられなかったし、意味も解らなかった。
「今回の件は……」
重苦しい雰囲気を壊すように何かを言いかけた翔太郎さんの腕をギュッと私は握りしめた。
その私の行動に驚いたように、目を見開いたのはまぎれもなく翔太郎さん本人だった。